高校卒業後、やりたいこともなく将来の方向性を決められずに、いずれ会社に就職すると安易に考え、大学の経営学部に進学しました。大学3年の12月に就職活動がスタートしても、やりたいと思うものがなく、仕方なく会社説明会に行き、なんとなく面接を受けていました。たくさんの会社から書類選考で落とされ、自分の無力さにとても悲しかった事を覚えています。
丁度、介護保険制度がスタートする年で、働くからには少しでも人の役に立ちたいと考え、在宅訪問介護の会社に事務職として拾ってもらい就職しました。事務所に1日中いる仕事で、主に介護保険請求と電話対応をしていました。電話対応をするものの、現場でどんなサービスをしているかさっぱりわからず、現場を知らないと利用者さんの対応が出来ないと思い、訪問介護の利用者さんの家に、ヘルパー2人で行うサービスをする為に一緒に入らせてもらったり、訪問入浴の現場に入らせてもらったり、それが私の利用者さんと接する初体験でした。在宅の現場は看護師もヘルパーも、常に人手不足で、入職と退職が多く把握出来ない程でした。現場に出てみて、利用者さんとの電話の内容が繋りました。現場にもっと出たいと思いましたが、訪問介護のサービスを行うには資格が必要と言われ、会社の休みにヘルパー2級講座を受けに行き、そこでベッドメーキングなど介護の基礎を学びました。
訪問入浴サービスの、正社員の看護師は入職してもすぐに退職してしまい、アルバイトと派遣看護師で成り立っていました。夜勤明けで仕事をしにくる看護師もいて、体力的に厳しいだろうけれど、色々な働き方があっていいなと思いました。一番魅力を感じたのは技術職なので、知識と経験を積み重ねていくことが出来てそれが自分の糧になるということと、様々な仕事や働き方があり、他にないのではないだろうかと思いました。アルバイトの看護師や、看護師からケアマネージャーになっている同僚を捕まえては、看護師ってどんな仕事?なんでなったの?仕事っていっぱいあるの?どうやったらなれるの?待遇は?と質問攻めにしては、自分には出来ないなと思う日々が数年続きました。なぜ出来ないと思うのかというと、親に大学を出してもらって、今更看護学校に行きたいと言えないし反対されるだろう、3年間学生をする資金がない、30歳から入学して周りはみな高校卒業して18歳なのになじめる訳がない、今から学生は辛い、体力的に厳しいなど出来ない理由がたくさんありました。
数年間もんもんと考える中、看護師になることは夢でした。挑戦しないと後悔すると結論を出し、社会人入試枠を見つけ家族に言わず看護学校を受験しました。合格してから伝えると意外なことに反対されずに応援してもらえることになり、独り暮らしをやめ実家に戻ることになりました。
時々、今の自分があるのはあの時に現場を見て、学ばせてもらったからだな、現場は今日も大変だろうなと、その会社の事を思い返しています。働いている場所は違うけれど、患者さんを思う気持ちは一緒だなと思います。あの頃の事を忘れずに自分の夢だったことが現実となった今、支えてくれた人達を忘れずに、感謝の気持ちを持ち仕事をしていきたいなと思います。
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