私は社会人生活を経てから看護学校に通い、看護師の資格を取りました。
企業での社会人経験からの転職についてなぜ?と聞かれることが多いのですが、理由は一つではなく、いくつかあります。企業では、一般事務や貿易事務に携わっていました。事務仕事は好きだし、特に貿易事務をしていた時は、海外の代理店とメールや電話でやり取りすることが刺激的で楽しかったのを覚えています。ただ、仕事内容は好きでも充実感は少なかった気がしていました。
自分で考え、それが業務に反映する、といった点で少なくとも私が行っていた仕事では難しく、私でなくてもできるのでは、と思い悩むことも多く、満足感を得ることができませんでした。今考えると、そういう環境の中でも自分で考え、できることはあったかもしれません。ですがその当時は「私でなくてもできるのに…」という思いにさいなまれ、焦りを感じていました。
年を経るごとにその思いは強くなり、時期同じくして身内の病気や死に直面することが増えてきていました。現状に満足していない状況、そして大事な存在のために何もできない自分、その二つの思いが相まって、看護の世界に飛び込んでみようか、という決断につながりました。そして「看護」に携わることを意識し始めてから、家族や大事な存在のため、あるいは自分のため、疾患の知識・経験を身につけたいという思いは日増しに大きくなり、そしてそれが職業に結び付けばなお理想的、と思ったのです。
看護師になり、実際業務をしていると、毎日いろいろな気づきがあります。周りの先輩を見ていていつも感じることは、同じ対象を見ていても視点が異なる、ということです。例えば同じ患者さんを見ていても、患者さんから受け取る情報量の違い、得た情報を元にその人個人に必要な看護を考えていく過程、すべてにおいて経験のある看護師と自分とでは違うと感じます。経験が浅い自分としては、今は業務をこなすことが精一杯であり、個別性を考え、その患者さんに適切な看護をしていくことは残念ながら、まだ出来てはいません。
高齢の患者さんになると、疾患が2重、3重に重なっていることは普通であり、疾患の理解のみならず、既往・合併症の有無、生活背景などを総合的に考慮して、その方に最も適切な看護を提供していく必要があります。その患者さんに一番相応しい看護とは何だろうと、自分で考え、提供していくこと、かつて自分が出来なかった、「私でなくては出来ない仕事、看護」をしていくことが今の目標です。
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