私は以前に小さな町の診療所で働いていました。人口8千人ほどの町ですが、小さな島をいくつか抱え、
島民の検診や診察などに同行し看護を行っていました。
月に2回、7~8人乗りの小さな船で片道1時間ほどかけ、最低限の医療機材を持参し島民の診察の介助を行っていました。島ではコミュニティーセンターを借り、仮の診察室を自ら設営していました。診察の流れは、時間で患者さんの受付を行い、受付順からバイタルサインを測定し診察をする。普通の病院の外来と変わらないことを事務員1名・看護師2名・医師1名で行っていきます。1日約20~30名ほどの患者さんの人数ですが、このスタッフの人数では、てんてこ舞いです。
2011年の震災以降から始まったこの訪問診療。それまでは島に診療所がありましたが、震災の影響で減った島民や、島の医師不在により島の診療所は閉鎖されてしまいました。島には高齢のかたが多く居住し、巡航船に乗って町の診療所を受診することは困難でした。
そのために始まった訪問診療は、とても喜ばれ島民の健康を支えています。
島には、共に90歳を超え、互いに支えあいながら暮らしているご夫婦がいました。2人とも持病があるため訪問診療はかかさず受診していました。高齢であり、受診するのさえ大変なはずですが、自分よりも若い患者さんに「体、大丈夫か?」・「あんまり無理するなよ」などの声をかけたり、医療スタッフにも「今日の波は大変だったなぁ」・「体大切にしろよ」・「最近顔みてなくて心配してたけど変わりないか?」など素敵な笑顔で、やさしい声をかけてくれました。そんな笑顔をみるたび「この笑顔を支えている一つの力として、この島での医療は欠かせないのではないか」など、いろいろなことを考え、気づかせていただく機会になりました。
小さな診療所では、大きな病院で行うような検査はできませんが、小さな病院としての担うものがあり、このことをしっかり考え、行っていく大切さを学びました。
今は、田舎を離れ東京で働いていますが、今もあの老夫婦の笑顔に支えられ、看護師の仕事を続けています。
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