2005.1.28

ナースコール
1病棟看護師 杉本久美子

 ナースコール。ベッドの頭の上に線がひゅっと延びていて,ボタンを押すと看護師に伝わるあのシステムです。私たちの病院では,看護師の持つ医療用PHSとつながるナースコールを使っており,患者さまからのコールはそれぞれの看護師が持つPHS又はナースステーションにつながり直接対話できるようになっています。ナースコールのボタンを押すと1病棟では「ピンポーン!」とチャイム音が,2病棟では「エリーゼのために」のメロディーが流れます。入院中の患者さまは,このチャイム音と「エリーゼのために」のメロディーが病棟中のあちこちで流れているのでよくご存知のようです。ところで,「エリーゼのために」はベートーベン作曲のピアノ曲です。でも,あのなんとなく哀愁を帯びたこの曲が流れると,看護師の,あるいは看護師だった多くの者は,反射的に「おっと,ナースコールだ。」と思うのではないでしょうか。私が今いる1病棟はチャイム音を使っているのですが,今までの経験からも,ナースコールといえばエリーゼのために,でした。日中の仕事で何度もナースコールに対応すると,帰宅してからもふとしたきっかけで,頭の中でエリーゼのために、が鳴り響きます。夢の中で聞こえることもあります。こういう経験のある看護師はいっぱいいると思います。どうして,ナースコールといえば「エリーゼのために」なんでしょうか。もし,流行りすたりで決めるんだとしたら,冬のソナタの主題歌とか「世界の中心で愛を叫ぶ」の主題歌なんてどうでしょう。あるいは,たたみかけてくる曲ということだったら「ゴジラのテーマ」なんてどうでしょう。マツケンサンバも元気が出そうですよね。でも,冬のソナタの主題歌とかだと,鳴った瞬間にいろんな映像まで思い出して最後まで聞いてしまいそうだし,「ゴジラのテーマ」はインパクトが強いけどそのせいでミスしてしまいそうです。いろいろ調べてはみたのですが,どうして「エリーゼのために」がナースコールのメロディーの代名詞みたいになっているのかは,わかりませんでした。メーカーに問い合わせてみたところ,「エリーゼのために」と「乙女の祈り」とチャイム音の3つから選択できるような機種が多いそうです。最近はなんと20曲くらいから選べるものも出てきているようです。もともとは,オルゴールの「エリーゼのために」が使われていて,それが電化されたときもそのままに使われたなどということも聞きました。

 ところで,「エリーゼのために」は,ベートーベンがとある女性に思いを伝えたくて作った曲のようです。哀調を帯びながらも人に訴えかけきて忘れられないのは,そのせいかもしれませんね。私個人としては,訴えかけるということでいえば,ビートルズのヘルプ!もいいかななんて思います。

 病院の入院患者さまも急激に平均年齢が高くなってきています。時にはさみしくて,夜中ナースコールを握りしめ鳴らしっぱなしでちょっと困ってしまう患者さまもいます。あるいは手術後の痛みを訴えるためやっとの思いで押される方もいます。ナースコールを受けてもすぐに行けないときもありますが私達に何かを訴えたくて押されている事を考え,すばやい対応を心がけていきたいと改めて思いました。
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