2006.7.21

猫と暮らして思うこと
病棟看護師  照岡香織

 我が家は猫を飼っている。家の中に4匹、ご飯だけ食べにくる外猫が3匹、あわせると7匹の猫の面倒をみていることになる。そうなると餌代以外にも、猫用のおもちゃにトイレ用の砂、医療費などを合わせると、月に1万円は軽く越えてしまう。

 2000年の東京都の調査によると、猫にかかる費用は1匹年平均約8万円という数字がある。8万円×7匹=56万円!……、ふー。
 ネズミ駆除の仕事もないし、洋服には毛が着くし、パソコンに向かうとキーボードの上を歩くし、洗濯物を取り込んで振り返ると、もうその上に寝ているし、観葉植物の土は掘り返すし、本当にため息の連続の毎日だ。これだけ迷惑をかけられてもなお、それでも、猫のいなかった時より幸せを感じるのはなぜだろう。
 家を出るとき、玄関口でひっくり返って、まるで引き止めるように靴の上でゴロゴロするギン。お風呂やトイレに入ると、ドアの向こうで待っているリリー。餌をもらいにくるとき、彼女も一緒に連れてくる男気あふれるコロ。私の足音を聴くと、遠くから鳴きながら駈けてくるトラ。
 彼らは、仕事で疲れて帰ってくる私に、まるで10年ぶりの再会のような歓待で毎日出迎えてくれる。柔らかい毛で覆われた体と丸い頭を撫でていると、多少のイヤな事は「まいっか」で終わってしまう。 だから、もし私が病気になって長期の入院生活を余儀なくされた場合、猫に会えなくなるのだけが心配だ。ホスピスではペットとの面会もできるらしいが、一般病院でそのようなサービスをしているという話はまだ聞いたことがない。
 2000年国勢調査によると、日本で飼育されているペット数は、日本の子供人口(15歳未満人口)よりも多いという計算になっており、私と同じように考えている人は、以外と多いのではないだろうか。
 ときどき患者さまから「家で猫(犬)が待っているから早く退院したい」という声を聞くことがある。1日も早くペットと会うために治療に専念したり、闘病意欲が高まるのなら、ペットに会えない環境も悪くないのかもしれないが。

 最後に余談をひとつ。
 著名な芸術家には、猫好きが多いことをご存じですか? 画家の藤田嗣治、ピアニストのフジ子・ヘミング、写真家のアラーキー、漫画家の松本零士、作家では大佛次郎、向田邦子、内田百聞、三島由紀夫、中島らも、などなど。タレントでは室井滋や爆笑問題なんかも猫好きだ。猫が好きという共通項があると、その人たちの作品を意識して触れる事も多く、そうやって趣味の幅が広がることはいいことだと思う。
 だからやっぱり猫が好き。
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