2007.1.25

今、思うこと
外来看護師   平賀 田鶴子

 新しい年のはじまり、ふと,自分がたどって来た道のりをふり返ってみる。どうして看護師というこの道を選んだの…と聞かれる事があります。胸を張って言える様な美談はありませんが多分、私をとりまいていた環境の中で、知らず知らずの内に培われていたものが、この道に進むきっかけになったのではないかと思ってます。欠点だらけだけどこんな自分でも誰かのために役に立てるのではないか、という想いと、女性でも自活できる仕事に就きたいという考で、この道を選択し、高校卒業後、片田舎から上京、全寮制の学校に入学しました。

 ほぼ全員地方出身者、全てが新鮮でした。そんな中で、級友はもちろんの事、先生方、諸先輩達から色々な事を優しく、また厳しく教えてもらいました。実習先で患者さまと接するときはもちろんの事、どんな時でも常に相手の気持ちになって物事を判断し行動する事、協調性を持つ事などなど、掲げればきりがありません。実習は1グループ4名で各科をまわりました。必死に病魔と戦っている患者さまの顔、顔、顔…。自分も色々な知識を早く習得したいという焦りの中で、患者さまが頑張っている姿に共感しながらも、常に看護に対するあせりと不安がありました。そんな悶々とした中で産科実習に入りました。その時の情景は今でも鮮明に記憶しています。はじめて生命の誕生に立ち会った時、グループ全員無言でした。と同時に皆の頬にキラキラ光るものがありました。生命の誕生がいかに神秘的で感動的であるかということ、命の大切さを実感しました。その後、一人の妊婦さんの出産から退院までを受け持たせていただき、看護すことが出来ました。何も分からなかったけど、自分なりに努力した事は確かです。嬉しい事に、20年ぐらい前よりその方から毎年便りが届きます。気になって学校に問い合わせ、私の住所を聞いたとか…。その時誕生した娘さんが、今は二児の母になり神戸に住んでいるとの事。ただ無我夢中で、マニュアルに添った看護しか出来なかったのに、今も感謝して頂いている事に恐縮をし、また喜びを感じています。

 余談になりますが、何かこの頃、殺伐としニュースばかりがあまりにも多く、悲しくなります。もう少し命の大切さを実感してほしいと思います。あの頃本当にいろんな事があったけど、寝食を共にしながらそこで学んだ事は、今の自分の中でも、また日々の仕事の中でも、充分反映されていると思っています。30代半ばで再就職ができ、今日に至っていますが、この仕事に就いて出会った人達から教えてもらった事が沢山あります。「命の大切さ」、「心」、「思いやり」などなど。言葉では表せないほどの感動をもらいました。若い頃は理解出来なかった事が、ここまで来ると笑い飛ばせる事もあります。この仕事は、患者さまを看護するだけでなく、皆さんに自分の心を看護してもらい、成長させてもらっていると思っています。毎日が反省することばかりのような気がしますが、この仕事が大好きだから、少しずつでも日々向上出来るように努力していきたいと思います。
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