2007.4.26

ボランティア活動を通じて学んだこと
2病棟看護師 河井 紀子

 私は海外生活の経験があり、それを生かしてみようと思い、2005年4月、日本赤十字社の赤十字語学奉仕団に入団しました。活動内容は通訳及び翻訳奉仕ですが、活動を開始する前に、団員がボランティア活動を行う上で必要となる知識、技術、ノウハウを習得していく場とし、基礎研修がいくつかありました。

 その中のひとつに、視覚障害者研修があり、その研修は知識や技術の習得に加えて、自分が経験したことのない視覚障害者の方の立場を理解し、学ぶ良い機会となりました。視覚障害者は全国で約30万人、千人に2人の割合といわれています。両眼の視力を矯正しても0.3に満たない人ですが、障害を負う時期も生まれながらの先天性、病気や事故による後天性と10人10色、見え方は全ての障害者で違うそうです。私達が白い杖を持った人を見かけると、“全く目が見えない”と思いがちですが、見え方には個人差があり、人によっては誘導の援助がいらない場合もあるそうです。まずは“お手伝いできることはありますか”と声をかけ、相手が希望するように接することだそうです。基本的な誘導の仕方は、視覚障害者の前に立ち、誘導者の肘の上を持ってもらいます。また障害者を誘導しながら目に映るものをリアルタイムに話してあげると良いそうです。実際、私もアイマスクを着用し、視覚障害者の立場となり歩行の誘導をしてもらいました。ただまっすぐに歩くことさえも不安に感じ、さらに階段の上り下りはとても怖い思いをしました。 日常生活でいかに私たちは視覚で周りの情報を得ているか、ということがわかりました。講義をしてくださった視覚障害者の方は、自分の身の回りで起きている出来事の情報が不足し、情報障害となる、と言われていました。 特に災害時は自分のいる場所、周りの状況を具体的に、リアルタイムで説明することが必要となってきます。

 この研修後、偶然にも地下鉄構内で白い杖を持って一人で歩いている視覚障害者の方をみかけました。帰宅ラッシュで大変混雑している中、彼女は杖を持ったまま立ち尽くしていました。周囲の人たちも気づいている様子でしたが、誰も声をかける人はいませんでした。私は近寄り彼女の行き先を聞き、次の電車に乗るために誘導のお手伝いをしました。電車に乗って驚いたことに、誰も優先席から席を譲る人がいませんでした。混雑している中、こちらから声をかけるのは少し勇気がいることでしたが、これを機に、援助をしていくことの自信になりました。これからもこのような状況に出会うことがあると思いますが、研修で学んだことを生かして、自ら実践していきたいと思います。
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