2007.8.20

初めての入院
病棟主任 楠木 明子

 Dr.は淡々と、「入院したほうがいいですね」と言った。一週間の発熱でさすがに体力の衰えを感じており、昨夜は38℃の熱と腰痛で明け方まで眠れずベッドで悶々とした私は、素直に「わかりました」とうなずいた。Dr.は、「よく生きてるって(血液)データですよ」とも言った。「生きてるって…、仕事してますけど…」と小声で突っ込んでみたが無視された。

 ○十年生きてきて、初めての入院である。一度家に帰り、入院準備をさせてもらう。この時期ごみを捨てておかないと、数日後に帰宅した時にたいへんな臭気が充満していることになる可能性がある。ごみを捨てたり荷物を準備しているうちに、あっという間に1時間半位たってしまう。よく患者さまに「早く帰ってきてください」と言うが、そうもいかないのだと実感する。病院に入り、パジャマに着替え、点滴が始まった。留置針って思っていたより痛いものだった。挿入した後金属の針は抜き、やわらかいチューブだけになるのに何かの拍子にビリッとした痛みが走る。何日も持続点滴をしている患者さまはたいへんだなと思う。また、気をつけていても点滴スタンドにルートが絡まってしまうし、三方活栓はあちらこちらにひっかかる。経験してみなければわからない事である。
 Ns.として働いていると、24時間切れ目無く仕事があるので、病院は24時間動いているように思っていたが、患者として寝ているとやはり夜には動きが止まっている感じがする。(別に悪い意味ではない)6:00点灯だが、実際に病院が動き出したなと感じるのは7:00過ぎ、働く人が増えいろいろな物音が聞こえてくるからかもしれない。8:00に朝食、12:00昼食までの時間はあっという間に過ぎる。面会人と話などしているうちに18:00夕食である。昼間は本当に時間のたつのが早い。反対に夕食後は急に時間の流れが遅くなる感じ。 特に21:00消灯を過ぎると朝までが長い。面会時間ぎりぎりまで誰かが居てくれても、それから朝の活気を感じるまで10時間以上ひとりぼっちになってしまう。もちろんNs.は来てくれるが、基本的には用事がなければこない。 それでもNs.は働きづめなのだ。夕食が採れるのは22:00〜23:00なんてざらだし、約束されている2時間の休憩が取れないこともある。“淋しい”とナースコールする患者さまの心情は理解できるが、今の現状ではそれを受け入れることは難しい。もっと余裕が欲しいとしみじみ思った。

 わずか1週間の入院生活であったが、今まで見ていた病院を裏から見ているようで興味深い経験だった。
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