2008.11.18

最近思うこと
病棟看護師 天内夏未

 三月に青森から上京してきた私は、東京に住むという事でわくわくしていました。初めての都会・初めての親離れ(この年で…笑)・はじめての新婚生活。好奇心旺盛の私は新しい事をするのが大好き。あれからまだ5か月、こっちに来てからの事、本当に時間が経つのが早いものです。それ程充実している、という事なのでしょうか。
最近まではオリンピック・パラリンピックに注目していました。どの競技の選手達も最後まで諦めず立ち向かう姿にテレビを見ながら感激しています。仲間と力を合わせて頑張る事、何かをやり遂げる事、目標に向かって立ち向かう姿勢、熱い心、感動の涙。4年に1回あるオリンピックは、日々の生活で大切な物を知らせてくれるいい機会なのかな…、と私は思います。 看護師経験が少ない私ですが、医療の現場で感じてきたもの、教えられた事はたくさんあります。それは患者さまだったり、医師であったり、先輩看護師であったり。たくさんの記憶のなかでも最近よく思い出す事があります。

 肺癌の終末期と告知された40代の男性、奥さまと3人のお子さまがいました。告知されてから除々に悪化し、不安も増す中、同室に同じ疾患の患者さまがおられましたが、病室からいなくなった事で精神的にも不安定に…。
この患者さまはとても我慢強く、息切れがあっても「大丈夫だから…、自分でできる。」ということがほとんどでした。聞いてから実施するのではなく、小まめに病室へ足を運び、言われる先に行うようにしていましたが、苦しさが増すにつれ、怒鳴ったり、イライラするようになりました。しかし、ある夜、私が夜勤の時ナースコールがあり病室に向かうと、とても苦しいそうな声で、苦しそうな表情をして、「ここ…一人…寂しい…誰かいて…くれれば…落ち着く…」と言われました。私が2時間付き添うと会話もできる位に落ち着いてきたのです。話をしているうちに娘さんが私と同じ年齢という事がわかり、まるで娘に話をするように、私にこう言いました。「早く結婚をして子供を産んだ方がいい、家族は大事にするんだぞ、子供っていいもんだ。」
 初めて患者さまの気持ちを聞く事ができて、嬉しい瞬間でした。その朝、家族の見守る中、その患者さまは永眠されました。

 患者さまは、必ずしも医療行為を求めず、安心出来る環境を求めていたのかもしれません。看護者の前に人間として大事なもの、また人間がもっている温かさ・優しさ・寂しさ・悲しさ、そして自分の家族や友達の大切さを改めて感じさせられました。
 それからの私は日々の出会いを大切にするようにしています。東京にきて、また、医療現場に働かせてもらっている事を嬉しく思います。また、日々の生活が充実できたと思えるよう毎日を頑張っています。
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