2008.12.13

認知症患者さまと接して思うこと
1病棟看護師  渡辺朋子

 日本全国、小児病院以外はどこの病院であっても高齢者の方の入院が多くなっています。認知症の方、或は認知症状が出ている時は、さまざまな症状や行動によって日常生活に支障を来す場合があります。入院生活という環境の変化は精神的な不安や混乱を与え、高齢者にとってはその状況を認知することが困難な場合があり、思いもよらない行動へとつながってしまうこととなります。

 点滴ラインを抜いてしまう。大きな声で叫び、暴れる。ベッドから落ちそうになっている。寝ているはずの患者さまがいつの間にか自宅に帰ってしまっていた。暴力を受けることもあり、常に危険と隣り合わせの状態にあります。入院4〜5日の間、それも夜間にみられ、病状の安定と共に落ち着かれることがいようです。患者さまにとっては入院という状況が認知出来ていない訳ですから、それは、それは必死の行動なのですが、興奮した気持ちを酌み取ることができず自分もイライラしてしまい、つい声を荒げてしまったこともあります。
 ご家族から、「うちの父(母)がそんな事をするはずがありません。家ではしっかりしているんです。」と認知症状について理解を得られない事があります。その気持ちは本当に分かります。私も自分の親が認知症になった姿を想像できないからです。
 看護師になって9年が経ちますが、認知症状に対する看護の答えが見つかりません。認知症患者には、本人のペースに合わせる・自尊心を傷つけない・孤独を感じさせない・快い刺激を与えるなど看護のポイントは学習しましたが症状は様々であり、そう上手くはいきません。その症状は看護師の少ない夜間帯にいため、余裕のない私達にとって戦争のような夜もあります。しかし、大変な事ばかりではありません。患者さまの一言に心和むこともあり、なじみの関係になったような気になります。このような表現は失礼かも知れませんが「かわいい」と心から思うこともあるのです。

 患者さまは全身を使って気持ちを表現しますが、その意思表示を受け止め、第一に安全を確保し、温かくやさしく、思いやりの気持ちを持って接してゆきたいと思っています。
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