2009.4.15

病人の気持ち
病棟看護師  多田 泉

 私が医療従事者になって間もない頃、当時は看護助手をしていた時だったと記憶しています。
 その日は6日間連続勤務の最後の日でとても疲れていましたが、友達と夜遊びに出掛けました。千葉県にある大きなホールでイベントがありました。大勢の人と大音響、疲れていた私は途中で抜け出し、比較的静かな場所で行動していました。その時、急に目の前が黒か白かはっきり覚えていませんが、ようするに貧血を起こして倒れてしまったのです。一人で行動していたので、近くにいた見知らぬ人に助けを求め、会場の係員さんを呼んでもらいました。その後、救護室へ行ったのですが・・・・ 救護室は薄暗く、ベッドが2〜3個あり、他にも寝ている人がいました。ベッドに横になって血圧を測り、救護室の係りの女性に連れは居ないのか聞かれました。係りの女性は2人いました。連れはいるものの、当時は携帯電話を今の様に全員が持っている時代ではなく、どうやってこの状況を伝えたらよいか不安な気持ちでいっぱいでした。友人はポケットベルを持っていると思い出し係員に言いました。しかし、ポケットベルでどう伝えるか、私自身持っていなかったのでさっぱりわからないのです。それに具合が悪いせいか、番号すら思い出せず、ますます不安になってきました。
そんな不安な気持ちでいる状態で、1人の係員がものすごくイライラしたきつい口調で「暗号読めませんか!」と。その口調は10年以上たった今でも忘れることができません。もう1人の係員さんは、とても穏やかな口調で優しく気遣ってくださり、救われる思いでした。結局友人に連絡がつき、一安心できましたが、この時の経験で具合の悪い時には絶対にきつい口調はいけないと身にしみて思いました。

 病人は病気に対して不安を抱き、心も健康な時より弱っていると思います。それ以来、この経験を教訓に優しい穏やかな口調を心がけています。ときにはイライラ、カリカリすることもありますが、仕事中には出したくないものです。そんな時は、あのきつい口調を思い出し自分がされて嫌なことはしてはいけないと、思い返すようにしています。
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