2009.8.14

フルーツバスケット
病棟看護師  末永信子

 うちの実家では、トマトは砂糖をかけて食事の終わった後に出てくるものでした。近所の八百屋でもメロンやみかんなどと一緒に並んでおり、私は長いことトマトを極上デザートと思っていました。考えれば給食でサラダに入っていたり、スープにも入っていた記憶もありますが、それはサラダの中のリンゴ、酢豚の中のパイナップルの例もあるようにトマトが果物であることを疑いもしませんでした。

 ある日友達のAちゃんのうちに遊びに行き、塩がかかって出てきたトマトを見たとき少びっくりしましたが、うちの父はすいかに塩をかけて食べる(しかも種も食べる)人だったためいろんな食べ方があるのだなと納得をしました。
 結局真実に気づくのは小学校の授業中のフルーツバスケットの時となります。こんなことありますよね。
 うちの実家ではお雑煮のもちは焼かずにそのまま入れますが、焼く地方もあり、また名古屋の方ではあん入りのもちを入れるらしい。韓国では産後わかめスープを飲むらしい。(わかめの栄養が産後に良いらしい)食ひとつとってもその人の生きてきた歴史が見えます。
 昔よりもいろんな国の方が暮らす日本・いろんな地域から集まって暮らす私たちの町、そして病院。
 病院は心配なことがあったり、調子が悪いときにかかることがいと思います。この前『長い人生において入院したりする期間は  点 である。今までとこれからの人生を 線 として、その 点 をどうやって 線 につなげていくかが病院から自宅へ向けての継続した看護である』と講師の方に教わりました。そのためにはその方の生きて来られた過程というのが重要になります。
入院されている患者さまに対してどうしても初めは病気のことばかりに目を向けがちですが、その方がどういった人生を送ってこられたかを考え、知ることによってもう一歩より近づいた看護につながります。そして、看護師・人間としての経験が増えた分、頭でっかちにならないよう努力をしていきたいです。

 そのうち私も「何号室ののぶこさん、トマトに砂糖かけたらばくばく食べちゃって」と看護師に言われるようになるのでしょう。そうなったらいいなと思います。それまでがんばっていきます。
Copyright© Kouseikai Suzuki Hospital All Rights Reserved.