2009.10.11

自分の中にある初心
1病棟看護師  生方 陽子

 私の毎日は、主人と子供のお見送りからはじまります。病院から程なくのところに住んでいる私は愛車の自転車にまたがり職場へと向かいます。春は桜を見ながら春を感じ、今は少し高い空を眺め秋を感じながら職場に向かいます。そんな中、ふと小学生のときに亡くした父のことを思い出すときがあります。 優しかった父は突然倒れ、そのまま意識がなくなったそうです。今でも忘れる事はありません。私が小学校から帰宅した時家の前に救急車が止まっており、母親にせかされるまま救急車に乗りました。まさか父親が重病なんて思ってもいませんでしたから、私は少しワクワクしていたのを思い出します。

 病院に着き、ICUの前で、1人で待っていた私に声をかけてくれた看護師さんがいました。その看護師さんは父の状態を把握した上で私に「これからはお母さんを支えてあなたも頑張ってね」と優しく言ってくれました。小学6年生の私は、初めはその言葉の意味を理解することができませんでしたが、翌日優しかった父は亡くなり、小さくなって泣いている母親の姿を見て幼いながらに理解することができました。その頃から私の中に「看護師になりたい」、という気持ちが芽生えたのかもしれません。それからほどなくして自分の進路の決断を迫られた時、漠然とした気持ちが強い決意へと変わり、今に至っています。
 近頃中学1年生の息子が「看護師になろうかなぁ」という時があります。まだ中学1年生だけに何となくかもしれませんが、看護師として頑張ってきた私にとってはとても嬉しいことでした。スズキ病院に職場体験にきた白衣の中学生を見るたびに自分の息子の発言と重なり、この子供たちが将来やりがいのある看護師の仕事を選んでくれることを私事ながらに期待せずにはいられません。しかしこの看護師という職業はやりがいがある反面、大きな責任と共に厳しい面も々あります。

 私もスズキ病院に勤めて10数年ぶりに病棟勤務に就くことになりました。医療は日々進歩していると共に看護も同じく進歩しており、初めはとまどい、迷うこともありましたが部長をはじめ、スタッフの暖かいフォローの中で少しづつブランクを埋めていくことができたと感じています。免許取得後、新人ナースとして病棟勤務をしていた頃は厳しい先輩・ドクターもく、涙を流して患者さまの所に行き励まされた事もありました。
 そして私にとって、大切な父が亡くなった時、優しく・たくましく・励ましてくれたあの看護師さん。看護師になる夢を抱いた気持ち、私も人の為に役立ちたいと思った初心をいつまでも忘れることなく切磋琢磨に努めたいと思います。
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