2010.9.1

自転車通勤
病棟看護師  杉本 久美子

 入職時から、スズキ病院への通勤は自転車に乗って、もう11年目…。毎日あせって漕ぎつつも、風や季節を感じながら進みます。
 春は石神井川の桜を見ながら…、こんな立派な桜が見られるのは,ここら辺に住む特権としか言いようがありません。
 夏はやはり石神井川の水の量を気にしながら…、ゲリラ豪雨はとても怖いものです。溢れ出したら,家に帰れません。
 秋は短くなった日の長さに寂しさを感じながら…、寂しさと食欲は反比例するものです。正久保橋のあたりはいい香り。
 冬はちょっとした雪が降った後でもやっぱり自転車に乗って,転ばないかと恐々,横滑りしながら進みます。早い時間だと,自分の轍だけが白い雪に先頭を切って進んでいきますし,早くない時は先の人の轍を外れないようについていきます。
 全部信号が青、そして西武線のあかずの踏切をうまく渡れるとそれだけで幸せいっぱいです。人生の喜びってそんなところにあるのかもしれません。(笑)こういうことを大事にすると,幸せの量って変わるのかな??

 だいたい同じ時間帯に,同じ場所で,同じ人に合います。ここでこの人に会うとやばいとか,余裕だなとか,いろいろと感じながら,それでも自転車を漕ぎ、進みます。
 10年も同じ道を通勤していると,ベビーカーに乗っていた子が親と手をつないで歩いていたり,いつも通り過ぎる建物のベランダに干されているベビー服が子供服サイズになっていったりして、顔は見たことはないけど誰かの成長の証しを感じます。
 そう、身近な成長もあります。自転車の後ろカゴに乗せて保育園に運んでいた娘も今は自由に自転車を乗りこなすようになり…、「ママはそそっかしいから無事に帰ってきてね、事故とか事件に遭わないでね」と毎日声を掛けて送り出してくれます。
 毎日の通勤も,ひょっとしたら小さい旅を繰り返しているのかも知れません。

 さて,見慣れた建物が見えて来ると,毎日の小さな旅の折り返し地点です。きりっと気持ちを引き締めて,白衣に着替えて,1日を始めます。
 「おはようございます。具合は如何ですか」!
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