看護学生のときに初めて受け持たせていただいた患者様は、50代の男性で脳出血を発症し片麻痺と失語症がありました。病院実習の初日、私は病名を聞いただけでどう関わっていいかわからず、病室に行きづらかったため、ナースステーションで情報収集をしていました。そんな私を察したのか、先生は病室にいくように言いました。病室に向かっている間、私は「話せない患者様とどうコミュニケーションをとったらいいのだろう」「何を話せばいいのだろう」と考えていましたが、答えは見つからず病室につき、あいさつだけをし、早々にナースステーションに戻りました。この3週間実習を乗り越えられるか不安でいっぱいでした。
実習の2日目から食事や排せつ、清潔ケアの介助やリハビリの見学をさせていただきました。最初は何をするにも抵抗があって、憧れで専門学校に入った私は、看護師の仕事の現実を知ったような気がしました。不安いっぱいで始まった実習でしたが、患者さまと関わるうちに少しずつではありますが、言葉はなくても患者様の出すサイン(表情やしぐさ)で意思疎通が図れるようになりました。この表情はテレビかな?この時間に体を動かそうとするのはトイレかな?など。学生のときは、1日中1人の患者様に関わる事ができたので、一日の生活パターンや日々のちょっとした変化にも気づけることができて、看護の喜びを初めて教えてもらいました。実習の終わりには患者様と離れるのがつらくて号泣しました。今でもふと、あの患者様はどうしているのだろうと思い出すことがあります。
実習の経験を活かし、5年目になった今でも、患者様が出すサインを見逃さないようにしています。自分で体を動かすことの困難な患者さまの着替えをお手伝いさせて頂いているとき、手がちょっとでも動くと「手伝おうとしてくれているのかな?」と思ったり、身体を動かそうとしている患者様をみると「何を訴えようとしているのかな?」と思ったり。病気によって意思疎通が困難な患者さまでも些細な変化に気づくことができれば、QOL(生活の質)の向上に繋がります。私はこれからも患者様を十分に観察し、患者様の出すサインを見逃さない看護師でいたいと思います。
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