『1秒でも早く痛みを取ってあげたい』
『ほんの少しでも、不安を拭い去ってあげたい』
11年前1人の新人看護師がいました。知識も技術もまだまだ未熟だけれど、共感できる素直な心がありました。ある日、1人の患者様が言いました。「この痛みを誰にもわかってもらえない。家に帰りたい。」と、手を差し出して泣いています。その手を握り一緒に涙を流す新人看護師は強く思いました。
それから11年、新人看護師は様々な経験を経て成長し2歳の子供を育てながらのママさん看護師になりました。毎日黙々と働くママさん看護師は気づきます。『あれ?何かおかしいな・・・』育児と仕事の狭間で、自分の理想とする看護が何だったのか忘れてしまっていたのです。すっかり森に迷い込んでしまったママさん看護師。「私の理想の看護や~い」「新人の頃の私や~い」毎日探すようになりました。
その時一人の患者様と出会います。突然の入院に少し戸惑っていた方でした。耳が少々聴こえ辛くコミニュケーションにも不安を抱き、表情にも表れているその方が気になりよく声をかけに行きました。その日の体調や浮腫(むく)み具合を看(み)に足に触れに行きました。表情が和らいだのを確認し、何気なくテーブルに目をやると綺麗に折られた紙製のコマを見つけます。これが本当によく廻り、とてもきれいでした。ママさん看護師は「子供に折ってあげたいので教えてください。」と、お願いします。
「これで良ければ折りますよ」「子供はいくつ?女の子?もっと綺麗な色で作るわ。」
「子供が口に入れないように気を付けてね。」
患者様はたくさんのコマと、中に小さな鶴が入って中身が見えるようになっている飾り箱も折って下さいました。その時ママさん看護師は本当に嬉しく涙が出るところでした。患者様はニコニコしています。
『見~つけた。』探していた大切な気持ち、患者様が見つけてくれました。
桜が葉桜に変わった今日この頃、家では2歳半の子供が今もコマで遊んでいます。看護師って本当にいい仕事です。
|