私は田舎で育ちました。家は古く、祖父が窯で焚火し風呂の湯を沸かすなど、今となっては貴重な思い出だと感じています。私の祖父は、94歳で亡くなりましたが、とてもパワフルな人でした。竹馬に乗りたいと言えば、山へ竹を伐りに行き、竹馬を作ってくれたり、80歳前半では、関西の田舎から夜行バスを予約し、一人でディズニーランドへ行き、ジェットコースターに乗り帰ってくる。近所の公園へ一緒にいくと、鉄棒につかまり突如、けんすい逆上がりをしだす。正月に出てくる鯛の焼き魚は、頭から骨まで丸ごと食べる…。祖父は100歳を超えても生き続けるのではないかと思うほどパワフルな人でした。そんな祖父も私が看護師1年目の冬を迎えたころ、肺炎になり入院1週間程でこの世を旅立ちました。入院する前から食欲がなく、体調不良を訴えていたそうですが、なんと入院前日、母が仕事から帰ってくると大きなバナナ(祖父の大好物)2本の皮がリビングにあり祖父は寝ていたといいます。その日以降、ほとんど物を食べられないまま祖父は亡くなりました。
私たち病棟看護師は退院されていく患者様へ「変だな、体調が悪いな」と感じた際は早期受診して頂くように説明しています。そして患者様のQOL(生活の質)についても日々、考え看護を行っています。私の母親は祖父の体調の変化に気づいていたのに、何でもっと早く病院へ連れて行ってあげられなかったんだ。など自分自身を責めることがありました。しかし、祖父は慣れ親しんだ自宅で、大好物のバナナを食べることが出来ました。祖父が何を望んでいたかは実際のところ分かりませんが、今となって思うことは、祖父は悔いなく最期の時を過ごせたのではないかと思います。
まだまだ未熟な私ですが、患者様、そしてご家族が何を望んでいらっしゃるのか、どうしていきたいのか…しっかり向き合い、その思いに少しでも寄り添える看護師になれる様、頑張っていきたいと思います。
|