私が子供のころなりたかった職業、それは「保母さん」でした。兄弟の一番上で小さい子の面倒をよく見ていたので、自然とそう考えるようになりました。
小学校の時、母にポロっとその話をしたところ、返ってきた言葉は「これから少子化だから就職先 苦労するよ」の一言でした。母は、保母の資格があり仕事をしていたこともあったので、何気なく話したようでした。小学生の私にとって「就職先に苦労する」なんて考えたこともなく、希望すればその仕事に就けると思っていたのに、とても現実的な言葉に戸惑ったのを覚えています。
そこで次に思いついたのが看護師という職業。その理由もとても簡単!通信簿に書かれるほどテレビっ子だったので、トレンディードラマ、料理番組、ドキュメンタリー番組まであらゆるジャンルを網羅していました。その中で私の目にとまったのは密着されている医師の近くでテキパキと働く看護師の姿でした。その番組が『救命病棟24時』。
小学生が視るには少し衝撃的な手術シーンや苦痛で泣き叫ぶ人などが映っていましたが、身を乗り出して観ていた記憶があります。
とても現実的な母も看護師という職業には反対も賛成もしませんでした。だって理由がテレビ番組の影響ですから、本当になるとは思ってもいなかったのだと思います。
そんなこんなで月日は流れ、高校時代。看護師になるという目標は変わらず、看護学校受験の準備をしていた時です。受験には面接試験が必須で、学校でも友達と面接の練習をしていました。面接で必ずと言っていいほど聞かれる質問が「どうして看護師を目指したのか」というもの。正直にテレビの影響ですなんて答えたら一発で不合格にされると思い、それらしい理由を見つけて受験…合格。看護学校に通うようになったら「救命」にそれほどこだわらなくなりました。
どちらかといえば、口腔ケアや清拭をしてきれいになって喜んでもらったり、体の向きを変えて楽になったりといったことのほうが正直好きです。もちろん、自分がやった点滴や処置で症状が改善されることもうれしいですけど・・・。
見透かされそうな面接官の目をくぐりぬけ10年以上。なんとか看護師を続けています。現実的な母も看護師になってからは職種について何も言わなくなりました。もし看護学校に受かっていなかったら、今頃、テレビ番組のスタッフになっていたかもしれません。
スズキ病院にきて丸5年。先輩や同僚と、患者さんのケアのことを話すのが結構たのしく充実しています。たいへんな部分も思い通りいかないところもたくさんありますが、もう少し続けられそうです。
(看護部長から)とっても頼りになる看護師‘池さん’です。もう少しと言わず、ずっと看護師でいてくれるでしょう。
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